Yebis International Festival for Art & Alternative Visions 2025

Top Photo:トニー・コークス インスタレーション風景、2023-2024年(Dia Bridgehampton、ニューヨーク)Courtesy the artist, Dia Art Foundation, New York, and Greene Naftali, New York.
Photo: Bill Jacobson Studio, New York[参考図版]

Yebis International Festival for Art & Alternative Visions 2025

15日間の映像祭で注目の5つのプログラム

映像とアートの国際フェスティバル「総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025 Docs ―これはイメージですー」が、東京都写真美術館を中心とした複数の会場で1月31日(金)から2月16日(日)まで開催される。

2009年より年に1度、恵比寿の地で展示や上映、ライブパフォーマンス、トークセッションなどを複合的に展開している「恵比寿映像祭」。

映像という言葉を限定的に用いるのではなく「映像とは何か」という問いを投げかけ、多様化する映像表現と映像受容の在り方を再検討しながら、国内外の作品を紹介してきた。
芸術と映像がもたらすオルタナティブな価値観の生成を促し、存続させていくためのプラットフォームとして発信を続けている。

今年で第17回を迎える「恵比寿映像祭2025」のテーマは、「Docs ―これはイメージですー」。

「ドキュメント(document)」は書類や文書を意味し、写真・映像などのイメージを含む、事実に基づく情報の記録を指す。
そして、これを形容詞化した「ドキュメンタリー(documentary)」という言葉はドキュメント的という語義を持つだけでなく、記録映画を意味する名詞としても使用される。

Lumière兄弟による実写映画の発明から130年を経て、誰もが写真や映像を通じて生活を記録し、共有することが当然となった現在。
他方で、写真は画像へ、映像は動画へ、従来より自由に制御可能なデジタルデータへと拡張し、事実とそれを表すイメージとの関係はより複雑で曖昧なものになっているとも言える。

これらのメディアの変容に着目した今回の映像祭では、幅広い作品群をイメージと言葉から紐解くことで、改めて「ドキュメント/ドキュメンタリー」を再考する試みが行われる。

Lula Japan Webでは、多様な開催プログラムの中から独自に選出した5つのコンテンツをご紹介。

1. Exhibition, Film & Talk Event|Tony Cokes

トニー・コークス インスタレーション風景、2023-2024年(Dia Bridgehampton、ニューヨーク)Courtesy the artist, Dia Art Foundation, New York, and Greene Naftali, New York.
Photo: Bill Jacobson Studio, New York[参考図版]

アメリカ・ロードアイランド州を拠点に、歴史的および文化的瞬間を再文脈化する映像作品やインスタレーションを制作するメディアアーティスト Tony Cokes。

80s以降、彼の作品は大衆文化に潜在するイデオロギーを浮き彫りにし、構造的な人種差別、権力、可視性などといった問題に取り組んできた。
緻密に構成されたビデオ・エッセイは、既存のテキストを鮮やかな色彩と不協和音のサウンドトラックの上に重ねることで生まれる感覚的なズレを利用して、作品体験をより複雑化しようと試みている。

本映像祭では、美術館2階ロビーでの展示や特別無料上映の「The Queen is Dead ... Fragment 1」と「Free Britney?」に加え、JR恵比寿駅から恵比寿ガーデンプレイスを繋ぐスカイウォーク(動く歩道)など、屋外のさまざまな場所でも作品を展開。
また、1月31日(金)には、彼と「恵比寿映像祭2025」のキュレーター 田坂博子によるプログラムに関連したスペシャルトークセッションが行われる。

2. Film|Matías Piñeiro

マティアス・ピニェイロ《You Burn Me》2024年 At Sea (María Villar) ⓒPelículas mirando el techo

1982年、アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれたMatías Piñeiroは、Shakespeare、Sappho、D. F. Sarmientoなどによる文学作品を題材に、独創的な手法で現代世界を描いてきた映画監督、脚本家。

現在はニューヨークに在住し、彼の短編および長編映画はベルリン国際映画祭、トロント国際映画祭、ロカルノ国際映画祭、カンヌ国際映画祭、ニューヨーク映画祭でプレミア上映されている。

本映像祭では、「You Burn Me」(2024)を2月1日(土)と8日(土)の2回上映。
イタリア人小説家 Cesare Paveseによる著書「Dialogues with Leucò」(1947)の「Sea Foam」という章で描かれた、古代ギリシャの詩人 Sapphoと人魚の女神 Britomartisの悲恋が、現代の女性たちによる研究、パフォーマンス、解釈の起点となり物語が展開される。

アイデンティティーやセクシュアリティの普遍的なテーマを原作および観客に挑む実験的な本作では、Sapphoの断片的な特徴を自身の映画の中で視覚詩としてドキュメントし、その神話を生き生きと描き出している。

3. Commission Project|Kaori Oda

小田香 新作《母との記録「働く手」》2025年[参考図版]

東京都写真美術館の新たな事業として「恵比寿映像祭2023」から始まった「コミッション・プロジェクト」は、日本を拠点に活動するアーティストを選出し、制作委嘱した映像作品を「新たな恵比寿映像祭の成果」として発表する取り組み。
今回は昨年度決定された4人のファイナリストによる新作が、総合テーマ「Docs —これはイメージです—」と連動しながら3階展示室にて具現化される。

今プロジェクトのファイナリストの1人である小田香は、1987年大阪府に生まれ、イメージと音を通して人間の記憶(声)を探求するフィルムメーカ、アーティスト。
2024年には最新中編「GAMA」(2023)が、MoMA Doc Fortnight、Cinéma du Réel、Festival du cinéma de Brive(SFCC批評家賞)など国内外の映画祭で上映された。

本映像祭への出品作は、「母との記録『働く手』」と題された作品。
通常の展示が行われる3階展示室に加えて、1階ホールでも会期中に計4回特別上映が実施され、来場者に作品を異なる視点から鑑賞する機会を提供する。

また、2月13日(木)には、ファイナリスト4名とキュレーター 田坂によるシンポジウムが行われ、各作品とその制作過程を共有。
テーマ「Docs —これはイメージです—」の源泉となった各作品を通じ、「ドキュメンタリー/ドキュメント」の意味が改めて探られる。

4. Exhibition & Talk Event|Ito Tari

イトー・ターリ《ひとつの応答ーぺ・ポンギさんと数えきれない女たち》 (2012年12月「アジアをつなぐー境界を生きる女たち1984-2012」展 沖縄県立博物館・美術館)パフォーマンス使用画像より、協力:ターリの会 [参考図版]

Ito Tariは、1951年東京都に生まれ、2021年に逝去したパフォーマンスアーティスト。

学生運動など社会運動が活発化していた1969年に和光大学芸術学科に入学し、身体が介入する表現に関心を持ったことからパントマイムを始める。
その後1982年から1986年にオランダでパフォーマンスを学び、また同時期からフェミニズムやセクシュアル・マイノリティの人権について考え始めた彼女は、1996年、パフォーマンス「自画像」でレズビアンであることをカミングアウトしている。

本映像祭では美術館2階における展示に加え、2月1日(土)には1階ホールにて美術史家 小勝禮子と写真評論家 笠原美智子によるスペシャルトークセッションが、また8日(土)には展示室にて関連ワークショップが行われる。

5. Partnership Program|Yuhki Touyama

《残された風景》より 頭山ゆう紀、2024 ©Touyama Yuhki / Courtesy of POETIC SCAPE

本映像祭の地域連携プログラムでは、恵比寿近隣の地域で活躍するアートの担い手が、それぞれの文化施設で選りすぐりの展覧会や多彩なイベントを開催。

POETIC SCAPEでは、写真家 頭山ゆう紀による展示「残された風景」が2月23日(日・祝)まで開催されている。

大切な人の生と死、喪失、不在や、目に見えないものを写真にとどめてきた頭山。
近年では「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」にて石内都との2人展「透視する窓辺」を開催し、ますますその活動が注目される。

「残された風景」は、末期の癌と診断された祖母の在宅介護を自ら引き受けた頭山がその合間に撮影したシリーズ。
頭山がわずかな息抜きの中で捉えた風景写真と、幼少期からお世話になった祖母に寄り添うような目線のモノクローム写真が混ざり合う。

2つの視点から編まれる展示は、介護をする・されるという近い距離で暮らす2人が、実際には異なる時間を過ごし別のものを見ていたことを物語る。
また、祖母に直接カメラを向けることができなかった彼女の潜在意識を感じさせながら、「不在」という大きく普遍的なテーマに繋がっていく。

拡張していく「ドキュメント/ドキュメンタリー」と、変化する社会状況の関わり。
15日間にわたる映像祭で、「Docs」の意味を問い直して。



TOKYO PHOTOGRAPHIC ART MUSEUM
03-3280-0099



【Yebis International Festival for Art & Alternative Visions 2025, “Docs: Images and Records”】
DATE:1月31日(金)~2月16日(日)
※月曜休館
※コミッション・プロジェクト展示は3月23日(日)まで
TIME:10:00am~8:00pm
※最終日は6:00pmまで
※2月18日(火)~3月23日(日)のコミッション・プロジェクト展示は6:00pmまで(木曜、金曜は8:00pmまで)
※入館は閉館の30分前まで
PLACE:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所他
ADDRESS:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
ADMISSION FREE
※一部のプログラムは有料
WEBSITE:www.yebizo.com/
※展覧会等の詳細や最新情報は映像祭のウェブサイトをご確認ください。

【“Artist Talk Tony Cokes”】
DATE:1月31日(金)
TIME:7:00pm~8:00pm
※開場6:45pm
PLACE:東京都写真美術館 1階ホール
FREE
※先着順(要整理券)

【Film “You Burn Me” by Matías Piñeiro】
DATE:2月1日(土)、8日(土)
TIME:6:00pm
PLACE:東京都写真美術館 1階ホール
FEE:¥1,000
※前売り券は¥800
※詳細は映像祭のウェブサイトをご確認ください。
RESERVATION FROM:webket.jp/pc/ticket/itemdetail?fc=00349&ac=0002&igc=0081

【Symposum “Second Commission Project: Docs in the Present”】
DATE:2月13日(木)
TIME:5:30pm~7:30pm
※開場6:45pm
PLACE:東京都写真美術館 1階ホール
FREE
※当日10:00amより東京都写真美術館1階ホール受付にて整理券配布(予定)

【“Workshop about ITO Tari”】
DATE:2月8日(木)
TIME:4:00pm~5:00pm
PLACE:東京都写真美術館 2階展示室
FREE
※先着順 (要整理券)

【“Talk Session about ITO Tari”】
DATE:2月1日(土)
TIME:3:00pm~5:00pm
※2:45pm開場
PLACE:東京都写真美術館 1階ホール
FREE
※先着順(要整理券)

【Yuhki Touyama “Scenes of Absence”】
2月23日(日・祝)まで開催中
※月曜、火曜、祝日休廊
※2月23日(日・祝)は開廊
TIME:1:00pm~6:00pm
※2月8日(土)は5:30pmまで
PLACE:POETIC SCAPE
ADDRESS:東京都目黒区中目黒4-4-10 1階
ADMISSION FREE
WEBSITE:www.poetic-scape.com/

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