Feminism and the Moving Image

Top Photo:Love Condition2020

Feminism and the Moving Image

ビデオカメラで描かれるフェミニズム

2024年に好評を博した東京国立近代美術館の展覧会「フェミニズムと映像表現」が、一部内容を変更して2月11日(火・祝)から6月15日(日)まで再び開催される。

マーサ・ロスラー《キッチンの記号論》1975年、Courtesy Electronic Arts Intermix (EAI), New York_

テレビの普及やビデオカメラの登場により、メディア環境が急速に変化した60s〜70s。

作家たちが新たなテクノロジーを自らの表現に取り入れ始めたこの頃、世界各地に社会運動が広がり、アメリカでは公民権運動、ベトナム反戦運動などの抗議活動が展開される。
その流れの中でフェミニズムも大衆的な運動へと発展し、男性優位の社会構造に疑問を投げかけ、職場や家庭での平等を求める女性が増加。

こうした状況下でアーティストたちは、抱いていた問題意識を社会に発信するようになっていった。

出光真子《グレート・マザー 晴美》1983年

前会期から続く本企画では、作品の一部を入れ替え、3つのキーワード「個人的なこと」、「対話」、「『私』の分裂」を鑑賞の手がかりとして提示し、上記の時代背景を起点とする70sから現代までの映像表現を展開。

当時、主題や形式が決まっている絵画などに対して比較的自由で未開拓な分野であったビデオは、社会的慣習やマスメディアの一方的な表象に対する抵抗を示すことにも有効なツールとなっていた。
60sは、それまで主流であった撮影後の現像とプリントを必要とする8ミリフィルムや16ミリフィルムに代わり、撮影後すぐに上映可能なビデオカメラが登場する。その即時性が注目され、撮った映像をその場で見せるライブパフォーマンスや即興的な撮影がさかんに試行されるようになる。

生成と完成のタイムラグが極めて少ないビデオは、撮りながら考える、あるいは撮ってから考えることを可能にし、身の回りの題材や個人的要素を反映した作品も制作された。

キムスージャ《針の女》2000-01年、Courtesy of Kimsooja Stu

またビデオは、絵画や彫刻、写真にはない発話という新しい要素を芸術表現にもたらした。

両親から娘に対する一方的な言葉と、それに反発する娘による言葉の応酬を描く出光真子の作品、2人の作家が粘土をこねながら対話する様子が映される遠藤麻衣と百瀬文による共作「Love Condition」など、対照的な「対話」の表現が紹介される。

また、Kimsoojaによる「針の女」では、声を伴う会話はなくとも、都市の雑踏の中、針のように直立不動で立つ女性と彼女に気づき眼差しを向ける人々の間に、異質な存在同士の無言の対話を見出すことができる。

出光真子《シャドウパート1》1980年
出光真子《清子の場合》1989年

さらに、「『私』の分裂」のセクションでは、出光真子に焦点が当たる。

70s前半、男女同権を求めて女性たちが立ち上がったウーマン・リブの時代に、映像という手段で自己の表現を始めた出光。
それから30年あまりの年月で40本近い作品を発表してきた彼女の作品では、家庭や社会で母親や娘、社会人などさまざまな状況に置かれた女性たちが直面する制約や葛藤、反発が描かれる。

また、作品の中に入れ子状にもう1つの画面を登場させることで、現実世界と精神的な内面世界との分裂を浮き彫りにした。

Love Condition2020

新たなテクノロジーの登場に伴って、自らの意志を芸術を通して伝えようとしてきた女性作家。
映像を通して示される、彼女たちの声に耳を傾けて。



HELLO DIAL
050-5541-8600



【Feminism and the Moving Image】
DATE:2月11日(火・祝)~6月15日(日)
※月曜、2月25日(火)、5月7日(水)休館
※ただし2月24日(月・祝)、3月31日(月)、5月5日(月・祝)は開館
TIME:10:00am~5:00pm
※金曜、土曜は8:00pmまで
※入館は閉館の30分前まで
PLACE:東京国立近代美術館 2階ギャラリー4
ADDRESS:東京都千代田区北の丸公園3-1
ADMISSION:一般 ¥500、大学生 ¥250
※高校生以下無料
※5月18日(日)は無料
※チケットの詳細は展覧会および美術館のウェブサイトをご確認ください。
WEBSITE:www.momat.go.jp/exhibitions/r6-3-g4

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