Top Photo:張恩滿(チャン・エンマン)
《蝸牛樂園三部曲—啟航或終章》(カタツムリ楽園三部作—出航か終章か)
高雄市立美術館蔵
Yebisu International Festival for Art & Alternative Visions 2026
映像祭で注目の7コンテンツをピックアップ
- Art&Culture
- 30.Jan.2026
映像とアートの国際フェスティバル「恵比寿映像祭2026あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」が、東京都写真美術館を中心とした複数の会場で2月6日(金)から23日(月・祝)まで開催される。

2009年より、映像をめぐるさまざまな選択肢に目を向け、多様化する映像表現と映像受容の在り方を問い直してきた「恵比寿映像祭」。
展示や上映、ライブパフォーマンス、トークセッションなどを複合的に展開し、芸術と映像が人にもたらし得るオルタナティブな価値観の生成を促進・存続させていくためのプラットフォームとして発信を続けている。
第18回を迎える「恵比寿映像祭2026」では、映像や写真の役割への問いかけを継続しながら、より柔らかな視点で社会状況の変化を考察。
テーマとなる「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」は、メインキュレーター Yu-Hsuan Chiuによる台湾語を起点とする。
1つして同じものがないさまざまな声音が響く空間に、木々の間から洩れた光が差し込む様子を表現するこの言葉は、私たちを取り巻く環境において、重奏するように異なる声が行き来し、多声的に折り重なって響く様子と重なる。
写真、映像、サウンド、パフォーマンスなどの多様な作品群は、不協であったとしても響き合い、重なり合う思考や存在が交差し、視覚的・聴覚的なポリフォニーを深く形成。
個々の声や形は消されることなく、複数の視点が交差して拡張されていく。
Lula Japan Webでは、多様な開催プログラムの中から独自に選出した7つのコンテンツをご紹介。
1. Exhibition|Chang En-Man

《蝸牛樂園三部曲—啟航或終章》(カタツムリ楽園三部作—出航か終章か)
高雄市立美術館蔵
台湾・台東に生まれ、現在は台北を拠点に活動するアーティスト Chang En-Man。
半台湾原住民族としての自身の経験とルーツに根差し、近代化と都市化の只中で、台湾原住民族が絶えず変化する社会文化的状況や生存条件といかに向き合ってきたかを探求してきた。
その手法は映像、写真、インスタレーションに加え、セルフ・オーガナイズやコレクティブ・プロジェクトなど多岐にわたる。
本映像祭では、18世紀の植物学者 Joseph Banksの植民地航海探検と、各地のそれぞれの動植物の移動(遷徙)から着想を得たインスタレーションを展開。
30s、日本の植民地政府の官僚がアフリカ産のカタツムリをシンガポールから台湾に輸入し、本来存在するはずのない生き物が外来種として異なる環境と条件で生き残ることになった。
本作では、パイワン族の族民が古謡を用い、南島語族と人類の起源という想像を起点にしてカタツムリの物語を詠唱する。
船の往来のように交錯する多層的な歴史の中、生き物の居場所の変遷を歌い上げながら、変化し続ける環境で形を変えて未来に残る姿が表現される。
2. Exhibition|Michi Tanaka & Jiro Takamatsu

言語楽器《パロール・シンガー》/1974年/東京都現代美術館/Photo: Norihiro Ueno
田中未知と高松次郎による言語楽器「パロール・シンガー」が、本映像祭にて公開される。
1945年に生まれ、演劇実験室「天井桟敷」のメンバーとして制作・照明を担当した田中未知は、寺山修司の秘書も務める傍ら、作曲家・楽器作家・実験映画監督としても活躍した。
高松次郎は1936年に生まれ、コンセプチュアル・アートを展開しながら、1963年に前衛芸術家グループ「ハイレッド・センター」を結成。
東京都各地で「ハプニング」を呼ばれるパフォーマンスを行っていた。
田中による本作が初登場したのは、1974年の個展「言語楽器─あらゆるコトバ が音楽に─」。
音が出せる文字盤(カタカナ配列)を備えたこの唯一無二の言語楽器は、日本語の発音記号と音楽原理が融合したものであり、文字それぞれに十二平均律を越えた音程が割り当てられ、言語を音として記憶し、音と記号の間に新しい可能性を創り出す。
発表から50年以上経った現在、「パロール・シンガー」と共に、高松による貴重なドローイングおよび寺山の「言語楽器展のための構想」など手書きの関連資料が合わせて展開される。
3. Exhibition|Ikuko Tsurumaki

1972年、東京に生まれた写真家 鶴巻育子。
執筆や写真講師など幅広く活動しながら、 Jam Photo Galleryを開設し、著名写真家の企画展やアマチュア育成にも尽力する。
国内外で撮影したストリートスナップによる作品を発表する一方、視覚障害者を取材し「みること」をテーマとした作品にも取り組んでいる。
「恵比寿映像祭2026」では、「『見えない、見えづらい世界』を覗いて見たい」という思いから始まったプロジェクト「ALT」を公開。
約4年間、視覚障害を持つ人々にインタビューを続けることで、鶴巻は簡単にはカテゴライズできない、インタビュイーそれぞれの背景に向き合ってきた。
コミュニケーションには絶えず誤解が生じるというズレを扱う作品群は、他者には自己の理解の及ばない領域があることを示し、「見ること」の過程を丁寧に問い直す。
また、2月11日(水・祝)には、ワークショップ「見える人、見えない人、見えづらい人が集まり、言葉で見る写真鑑賞ツアー」を開催。
視覚障害のある難波創太と共にファシリテーターを担当し、参加者に写真から見えるものや感じることを言葉にして共有し、他者との視点の違いを体験することを促す。
12日(木)にはアーティストトークも実施される。
4. Live Event & Performance|Tomoko Sauvage

Courtesy of the Artist
水という素材の流動性を生かした電子音響楽器「Waterbowls」を考案し、実験音楽の分野でパフォーマンスや録音作品、インスタレーション、映像作品等を発表するTomoko Sauvage。器の椀、石、貝、ガラス、また水滴や水波、泡など多様な形態の水を組み合わせた独自の音具を調律・振動させ、通常は聞こえないに等しい微細な音をマイクで拡大し音風景を構成する。
それらは暗喩的な物音の聴き方、作曲の手法としての偶然性を取り入れた制作とも言える。
本映像祭では、湿った鏡を擦り、その音をマイクで増幅させることで象の鳴き声のような響きを生み出した映像作品「Barrissando」の公開に加え、2月7日(土)と10日(火)にはWaterbowlsを用いたライブパフォーマンスを実施。
環境の変化と共に表情を変える水。
時間の経過に合わせて刻一刻と外的な影響を受けて変化し続ける水と音たちが、独自の楽器によって奏でられる。
5. Exhibition|Hou I-Ting

高雄出身で現在は台北を拠点に活動するアーティスト Hou I-Ting。
アクションと参加を軸に、地域の団体や美術館などの文化機関と協働して、サイト・スペシフィックな参加型のプラットフォームを立ち上げている。
イメージや映像に刺繍を重ねることで、日常にあふれるイメージの見方そのものを揺さぶり、平凡に流れがちな視覚体験を再構築するHou。
社会経済システムにおける女性労働の条件に関心を持ち、その実践は時間と共に移ろう「身体とイメージ」の関係性に根差す。
サイトでのソーイング・アクション(縫う行為)は、資本主義社会における労働への文化批評へと昇華されている。
本映像祭では、日本植民地時代における台湾の典型的女性像を捉えた写真に刺繍を施すことで、女子の身体労働と社会的役割を問いかけた作品「歷史刺繡人 Lı̍k-sú Tsiam-tsí lâng―帝国婦」シリーズを展開。
また、日本文化の影響が残る戦後台湾において、台湾語による日本歌謡曲のカバー曲が出されたことを背景とする刺繍作品「所有的小姐 Sóo-ū-ê sió-tsiá(レイディたち)」も公開される。
6. Comission Project|Haruka Komori

東京都写真美術館の新たな事業として「恵比寿映像祭2023」から始まった「コミッション・プロジェクト」。
日本を拠点に活動するアーティストを選出し、制作委嘱した映像作品が「新たな恵比寿映像祭」の成果として発表される。
「恵比寿映像祭2026」では、会期中に恵比寿映像祭2027 に向けて制作委嘱する4 名のアーティストをファイナリストとして選出・発表する他、前回特別賞を受賞した小森はるかによる特別展示が行われる。
1989年静岡県に生まれ、東日本大震災後、ボランティアで東北を訪れたことをきっかけに画家・作家の瀬尾夏美とアートユニットとして活動を開始した小森。
2012 年には岩手県陸前高田市に拠点を移し、人々の語り、暮らし、風景を映像で記録。
2022年からは新潟県に在住する。
本映像祭で公開されるのは、「春、阿賀の岸辺にて」と題された映像作品と複数の新作インスタレーション。
「春、阿賀の岸辺にて」では、映画「阿賀に生きる」の発起人でもあり、新潟水俣病安田患者の会事務局長として活動を続ける、旗野秀人の姿が捉えられている。
彼女は現在も、水俣病患者の支援に奮闘してきた旗野や彼のもとに集う人々の賑わいの中に記憶が受け継がれていく希望を見出しながら記録を続ける。
インスタレーション作品で焦点が当てられるのは、旗野の妹である中村美奈子や、作家の父の実家がある静岡県川根本町・地名。
過去の経験をなかったことにしないため、語り、伝える人々に出会う小森は、彼らが同時代に生きていて、人知れず動き続ける姿に希望を抱きながら、カメラを向け続ける。
7. Exhibition & Symposium|Exonemo

展示イメージ/インスタレーション/東京都写真美術館蔵
千房けん輔と赤岩やえによるアーティスト・デュオ エキソニモ。
1996年にインターネット上で活動を開始して以来、現在はニューヨークを拠点にネットワーク時代の人間の身体性や感情を、デジタル・アナログメディアを横断しながら批評的かつユーモラスに表現している。
本映像祭では、画面を指でなぞるだけで風景を切り取り、絵を描くような感覚でリアルタイムにコラージュ写真を生成できるカメラアプリとして制作された作品「Joiner」を3階展示室にて公開。
また、恵比寿ガーデンプレイス センター広場におけるオフサイト展示としてインスタレーション「Kiss, or Dual Monitors 2026」を展開する。
目を閉じた人々の顔が映り、キスを交わしているかのように重なり合った2つのモニター。
その足元には、絡み合うように無数のケーブルが広がる。
情報時代のコミュニケーションがテーマの本作は、2017年にニューヨーク・ブルックリンのオープンスタジオで公開制作され、日本や世界各地で発表されてきた。
2026年の新たなバージョンでは、従来宙に吊られていたモニターがケーブルの海へと沈み、巨大なLEDウォールへと変身。
かつて「空に浮かぶ」存在だった情報は今、私たちの足元を支え、現実に力を持つことを示唆する。
また2月15日(日)には、予測困難で流動的な現代の状況を背景に、美術館をはじめとする制度がいかにしてデジタルアートを「生かし続ける」ことができるのかについて考察するシンポジウムが開催。
パネリストとして、エキソニモの2名とメディア・アートの国際的なプラットフォームであるRhizomeのアーティスティック・ディレクター Michael Connor が登壇する。
混沌とした世界で重なり合っていく、唯一無二の声や音。
そこに差し込む光を、多様な作品群の中に見出して。
TOKYO PHOTOGRAPHIC ART MUSEUM
03-3280-0099
【Yebis International Festival for Art & Alternative Visions 2026, “Polyphonic Voices Bathed in Sunlight”】
DATE:2月6日(金)~23日(月・祝)
※2月9日(月)、16日(月)は休館
※3階展示室のみ2月6日(金)~3月22日(日)
TIME:10:00am~8:00pm
※最終日は6:00pmまで
※2月25日(水)~3月22日(日)の3階展示室は6:00pmまで(木曜、金曜は8:00pmまで)
※入館は閉館の30分前まで
PLACE:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所他
ADDRESS:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
ADMISSION FREE
※一部のプログラムは有料
WEBSITE:www.yebizo.com/jp/
※展覧会等の詳細や最新情報は映像祭のウェブサイトをご確認ください。
【Workshop “Seeing with Words: A Photo Tour for People Who See, Cannot See, and See Differently”】
DATE:2月11日(水・祝)、22日(日)
TIME:11:00am~1:00pm
PLACE:東京都写真美術館3階展示室
FREE
※事前申込制(応募多数の場合は抽選)
【Artist Talk:TSURUMAKI Ikuko】
DATE:2月12日(木)
TIME:7:00pm~8:00pm
PLACE:東京都写真美術館 1階スタジオ
FREE
※要整理券
※東京都写真美術館1階総合受付にて、当日10:00amより整理券を配布
【Live Event & Performance “Tomoko Sauvage, Waterbowls”】
DATE:2月7日(土)、10日(火)
TIME:7:00pm~8:00pm
PLACE:東京都写真美術館 1階スタジオ
FREE
※要整理券
※東京都写真美術館1階総合受付にて、当日10:00amより整理券を配布
【Film “Komori Haruka, Spring, On the Shores of Aga”】
DATE:2月14日(土)
TIME:6:00pm
PLACE:東京都写真美術館 1階ホール
FREE
※東京都写真美術館1階ホール受付にて、当日10:00amより整理券を配布
【Symposium “Migration, Emulators, and Echoes: How Institutions Keep Digital Art Alive”】
DATE:2月15日(日)
TIME:3:00pm~5:00pm
PLACE:東京都写真美術館 1階ホール
FREE
※東京都写真美術館1階ホール受付にて、当日10:00amより整理券を配布
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