Erika Kobayashi
作品を通じて蘇る、歴史に埋もれた少女たちの声
アーティスト 小林エリカの展覧会「Yの一生 The Life of Y – ひとりの少女」が、Yutaka Kikutake Galleryにて5月31日(土)まで開催中。
1978年東京に生まれた小林エリカは、歴史、家族や記憶、場所の痕跡から着想を得て、入念なリサーチに基づく表現活動を展開する。
その手法は小説、コミック、ドローイング、写真、映像、インスタレーションなど多岐にわたり、小説「マダム・キュリーと朝食を」、コミック「光の子ども1~3」など執筆活動においても高い評価を獲得。
2024年に出版された長篇「女の子たち爆弾をつくる」では第二次世界大戦中、有楽町の東京宝塚劇場に学徒として動員され風船爆弾作りを行った少女たちを描き、第78回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞した。
東日本大震災以前からリサーチを続け、近年核や放射能の歴史をテーマにした作品制作を展開する彼女は、本作で戦時中の語られてこなかった女性たちの声を丁寧に拾い、編み上げている。
本展では、本書の内容に呼応した新作のペインティングを含む作品群、関連資料、およびテキストから構成される総合的なインスタレーションを発表。
振袖の裏地絹に少女たちにゆかりのあるテーマ、ゆかりのある場所の桜をそれぞれ描いた「桜」をはじめとした新作を公開する。
そして小林が戦中の少女たちの声を託した、当時雙葉高等女学校に通う女学生であった実在の人物「Y」のポートレートの他、「Y」自身が学生時代に描いた絵画や「いろはうた」などから、これまで「大文字」の歴史の影に埋もれてきた個人の記憶が辿られる。