Takashi Homma
現代日本のリアルを写したポートレート作品
写真家 ホンマタカシの作品集「Portrait of J」が、9月に発売される。
40年に及ぶ創作活動を通じて、さまざまな作品を生み出し、今日の日本の写真界で最も影響力のある人物の1人となったホンマタカシ。
1998年に刊行した代表作「東京郊外 TOKYO SUBURBIA」における東京の郊外風景を追った初期の作品から、建築や自然、都市の歴史をコンセプチュアルに探った作品群まで、視覚文化における写真の役割に挑み、その可能性を拡張させ続けている。
またその影響は国外にも及び、展覧会や出版物はアイデンティティー、場所、そして写真集が物語る視覚言語の進化を取り巻く、世界的な対話の発生や発展に貢献している。
作品集「Portrait of J」は、2002年から近年までの間に撮影された、111人の日本人のポートレートを収録した写真集。
プリツカー賞受賞建築家である磯崎新や、1968年から1970年にかけて発行された伝説的写真雑誌 provokeの共同発案・創刊人である中平卓馬など、ホンマにとってメンターである人物から受けた影響に敬意を表しながら、同時に現在も活躍するあらゆる世代の幅広い職業や人生経験を写し取り、ポートレートという形で表現した。
これまで日本では、写真家 東松照明が戦後の日常生活に密着したポートレート群、写真家 上田義彦が昭和を生きた日本の巨匠たちを記録した「ポルトレ」、写真家 鬼海弘雄の「Asakusa Portraits」、写真家 須田一政の「東京景」、写真家 渡辺克己の「新宿群盗伝 66/73」などが、東京に生きる匿名の人々の個性と静かな貫禄を捉えてきた。
本作は、文化的なアイコンとされる面々に対して向けられるのと同じような敬意と共に、一般の一個人たちにも意図的に焦点を当てていることを特徴とする。
人々を小細工や演出から解き放ちたいという作者の願望は、日本人のアイデンティティーをより包括的でニュアンス豊かな表現で写し取り、視野を拡張させている。
作品群は主に都市部を中心に数々の見慣れた場所で撮影され、そうしたロケーションは被写体の心理的な深みを表現するスポットライトのような質を持ち合わせる。