DESIGNART TOKYO 2024 Report

DESIGNART TOKYO 2024 Report

今秋のフェスティバルで注目の6展示

デザインやアート、インテリアなど多彩な展示が繰り広げられる大型フェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」が、10月27日(日)まで都内各所の会場で開催中。
「つくる責任 つかう責任」のある未来を見つめたものづくりが東京の街を彩り、鑑賞者は各所を回遊しながら作品の購入も楽しめる。

Lula Japan Webでは、多彩なジャンルにまたがる今年のラインナップから注目の6展示をレポート。
新たな視点を引き出して日常をリフレーミングする、かけがえのない出会いを探して。

1. Exhibition|SIO × PERVERZE

東京を拠点とするファッションブランド・プロジェクト「PERVERZE」とぬいぐるみアーティスト SIOのコラボレーションによる展示が、PERVERZE THE EMBODIMENT STOREにて10月27日(日)まで開催中。

東京の若手匿名クリエイター集団によって2016年に設立された「PERVERZE」は、大量生産時代以前のヴィンテージウェアへの敬意を、現代のストリートスタイルにアップデートしたコレクションを制作する。
2018年には写真家と共同で出版および展示を行うプロジェクト「PERVERZE PHOTOGRAPHY」を立ち上げ、これまでにToyin Ibidapo、Sunny Suits、Kira Bunseと共に作品を発表してきた。

本展では、アーティスト SIOが2022年より手がけるぬいぐるみのアートピース「The TOMODACHI!」とコラボレート。
SIOは「PERVERZE」のルーツである80〜90sに撮影されたSTREET Magazineのアーカイブ写真にインスピレーションを受け、14体のぬいぐるみを新たに制作した。

展示は、それぞれの作品と写真を対にした構成。
さらに、今回のために作られたアクリルキーホルダーとポストカードのセット、ステッカー6種セット、ハンカチといったオリジナルコラボレーショングッズも展開され、チャーミングな「トモダチ」が日常にユーモアを添える。

2. Exhibition|Jun Tsunoda

Jun Tsunoda. garden. 2024. Acrylic, Japanese lacquer, oil pastel and plaster on wooden panel. 660 × 530 mm. Courtesy of the artist.
Jun Tsunoda. reincarnation. 2024. Acrylic, Japanese lacquer, oil pastel and plaster on wooden panel. 660 × 530 mm. Courtesy of the artist.

アーティスト 角田純の個展「The secret life of plants」が、Gallery Commonにて11月3日(日・祝)まで開催中。

80sよりアートディレクターとして活動してきた角田純は、その傍らでライフワークとして続けていた絵画などの作品制作を2004年から本格的にスタート。
本展では昨年の個展で30年ぶりに取り組んだ、植物や水といったテーマを漆喰やニス、アクリルなどの素材を重ねて表現する「Black Plants」シリーズの新作が展示されている。

本シリーズは80s後半、角田が東京から山梨県の八ヶ岳に移り住んだことをきっかけに始まったもの。
八ヶ岳の生活の中である時、作業で用いたニスが固まっていることに気づき、そこに木の樹脂から形成された琥珀の質感を重ねたという。
幼少期から鉱物に惹かれていた角田は、ニスをきっかけに植物と鉱物との繋がりを見出し、植物のフォルムと鉱物の透明度を組み合わせながら、その相互作用から生まれるエッセンスを絵画に表現している。

大小さまざまなスケールが並ぶ本展の絵画には、これまでのプリミティブな形態の植物をベースに、より透明感のある色彩が取り入れられた。
角田が素材の流動性を楽しみながら構築した作品は植物に満ちるエネルギーを放ちながら、観る者に優しく語りかける。

3. Exhibition|Rei Naito

「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」2024年 | 銀座メゾンエルメス フォーラム展示風景 撮影:畠山直哉 / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」2024年 | 銀座メゾンエルメス フォーラム展示風景 撮影:畠山直哉 / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」2024年 | 銀座メゾンエルメス フォーラム展示風景 撮影:畠山直哉 / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

東京を拠点に活動するアーティスト 内藤礼の個展「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」が、銀座メゾンエルメス フォーラムにて2025年1月13日(月・祝)まで開催中。

1961年に広島県で生まれ、「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」を一貫した問いとして作家活動を続ける内藤礼。
その作品は、光や影、水や大気の移ろいがもたらす生と死のあわいに、見過ごしがちなささやかな事物を「根源的な生の光景」として人々の中に結びつけ、深い体験をもたらす。

本展は、東京国立博物館で今年9月23日(月・振休)まで開催された同名の展覧会と一連の流れを持って構想されたもの。
歴史ある文化財を有する東京国立博物館では遥かな「過去」との交感が為されたのに対し、都市の中心部に浮かぶ銀座メゾンエルメス フォーラムの会場は、過去から隔てられた「生」の象徴として捉えられている。

2023年から24年にかけて日々アトリエで制作された「color beginning/breath」は、展覧会へと向かう作家の生の刻として、物理的な時間の不可逆性を示す絵画シリーズ。
東京国立博物館との円環の語りの一軸を形成しながら時系列に展示される本作は、同色の糸を用いた立体作品にも展開されている。
低い位置に設置された「座」には実際に腰をかけることで、向かいに位置する花などの作品に同じ目線で対峙でき、より没入的な生の体験へと誘われる。
またギャラリーの空間を、あるいは銀座の交差点を見下ろすように佇む「ひと」という作品には、見たものを希望だと信じて疑わない、という内藤の考えが込められており、見つめられる私たちを大きな慈悲で包み込む。

ガラスブロックを通じた自然光、そして街からの光が移ろう会場に並ぶ、驚くほど繊細で小さな作品の数々。そこには未来へ向かう生への希求がこだまし、内藤の「生まれておいで 生きておいで」という呼びかけが聞こえてくる。

4. Exhibition|&T × Hiroko Otake

「Butterfly Camouflage」
「Flow and Movement」
「Circulation」

2024年4月に工業用刺繍メーカーTAJIMAからローンチされた刺繍アートブランド「&T」が現代日本画家 大竹寛子とコラボレーションした作品をSpiral Esplanade(Spiral M2階)にて10月27日(日)まで披露する。

「DESIGNART TOKYO」に初の出展となる今回は、刺繍インスタレーション作品「Flow and Movement」、「Butterfly Camouflage 」 、「Circulation」を展示する。

2年以上の月日をかけて生み出した最新作の「Flow and Movement」では、漁網からアップサイクルされた生地や糸を使用。素材への挑戦にも取り組み、技術の発達の先にある理想と問題点を改めて社会に問い直している。

作品の蝶は触れると連鎖的に発光する技術で作られており、まるで実際に羽ばたいているよう。幻想的な光と共に会場を美しく彩る。

欧州のラグジュアリーブランドから広く採用され、技術力に定評があるTAJIMAと、大竹の伝統的な日本画の技術力に裏打ちされた感性が融合した作品からは、布や糸といった身近な素材の新たな可能性が感じられる。

5. Exhibition|Straft

Tamaki IshiiとKazuma YamagamiによるクラフトユニットStraftによる展示「Exhibition “NEST”」が景色/Keshikiにて10月27日(日)まで開催中。30歳以下のクリエイターを対象とする「DESIGNART TOKYO」の若手支援プログラム「UNDER 30」に選出された彼らは、米を収穫した後に残る稲藁を主な素材として扱い、日本人に連綿と受け継がれている自然観を現代に投影することを試みている。

古来から屋根や壁だけでなく神事にも使われてきた稲藁を大胆に用いた作品は、圧倒的な存在感を放ち、会場に厳かな雰囲気を漂わせる。編み方の違いで様々な表情を見せ、日本人の暮らしを支えてきた稲藁。

大量生産大量消費の時代に必要とされる精神的な豊かさと手仕事の尊さに共鳴するはず。

6. Exhibition|Terence Orby Conran

バートン・コート自邸内の仕事部屋、2004年撮影 Photo: David Garcia / Courtesy of the Conran family
コンランのパターン・デザインによるディナープレート「チェッカーズ」、1957 年 Courtesy of the Conran family
コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」、1952年撮影 、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵 Photo © Estate of Raymond Williams / Courtesy of the Conran family

個人の生活空間から都市、社会までを広く視野に入れ、デザインによる変革に突き進んだSir Terence Orby Conranの軌跡を辿る展覧会「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が東京ステーションギャラリーにて2025年1月5日(日)まで開催中。

「Plain, Simple, Useful」なデザインを掲げ、イギリスの生活文化に変革をもたらしたConranの人物像を辿る、日本初の展覧会は「デザイナー、コンランのはじまり」、「起業の志:ハビタとザ・コンランショップ」、「食とレストラン」、「再生プロジェクトと建築/インテリア」、「バートン・コート自邸」、「ものづくり:ベンチマークとプロダクト」、「⽇本におけるプロジェクト」、「未来にむけて」の8章構成。Conranがパターン・デザインした食器やテキスタイルなどのキャリア初期のプロダクトや、家具デザインのマケット、発想源であった愛用品などが300点以上並ぶ、充実の内容となっている。

「デザインが暮らしを豊かにすること、いつでもこれが私にとって一番大事なことだった」と語り、ザ・コンランショップによって世界中にデザインブームを巻き起こしたConranの一端に触れる体験を。

また、日本上陸30周年を迎えるザ・コンランショップでは工藤桃子、熊谷彰博、藤城成貴、柳澤星良の4人のデザイナーたちとアジア・日本らしい現代的な家具作りを目指し新たな活動を開始。ザ・コンランショップ 丸の内店では、10月27日(日)までこの活動および新しい商品開発への礎となるインスピレーションを紹介する「ザ・コンランショップ 30周年企画 INSPIRATIONS for the NEXT」を開催中。

「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」と合わせて鑑賞すれば、よりConranの哲学が浮かび上がってくる。

秋の東京に巡る、次世代の原動力。
前進するデザインやアートが、日々をクリエイティブに刷新する。



DESIGNART TOKYO COMMITTEE
designart.jp



【DESIGNART TOKYO 2024】
DATE:10月27日(日)まで開催中
PLACE:表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・広尾・銀座・東京
WEBSITE:designart.jp/designarttokyo2024/

【SIO at PERVERZE THE EMBODIMENT STORE】
DATE:10月27日(日)まで開催中
TIME:11:00am~8:00pm
PLACE:PERVERZE THE EMBODIMENT STORE
ADDRESS:東京都港区南青山5-5-1
ADMISSION FREE

【Jun Tsunoda “The secret life of plants”】
DATE:11月3日(日・祝)まで開催中
※月曜、火曜休廊
TIME:12:00am~7:00pm
PLACE:Gallery Common
ADDRESS:東京都渋谷区神宮前5-39-6 地下1階
ADMISSION FREE

【Rei Naito: come and live – go and live】
DATE:2025年1月13日(月・祝)まで開催中
※水曜休館
TIME:12:00pm~7:00pm
※入場は閉場の30分前まで
PLACE:銀座メゾンエルメス フォーラム8・9階
ADDRESS:東京都中央区銀座5-4-1
ADMISSION FREE

【&T | Flow and Movement】
DATE:10月27日(日)まで開催中
TIME:11:00am~7:00pm
PLACE:Spiral Esplanade(Spiral M2階)
ADDRESS:東京都港区南青山5-6-2
ADMISSION FREE

【Straft Exhibition “NEST”】
DATE:10月27日(日)まで開催中
TIME:11:00am~7:00pm
PLACE:景色/Keshiki
ADDRESS:東京都中央区日本橋兜町6-5 兜町第6平和ビル地下1階
ADMISSION FREE

【Terence Conran: Making Modern Britain】
DATE:2025年1月5日(日)まで開催中
※月曜、12月29日(日)〜2025年1月1日(水)休館
※月曜が祝日の場合は翌平日休館
※12月23日(月)は開館
TIME:10:00am~6:00pm
PLACE:東京ステーションギャラリー
ADDRESS:東京都千代田区丸の内1-9-1
ADMISSION:一般 ¥1500、高校・大学生 ¥1300
※中学生以下無料
※チケットの詳細は美術館のウェブサイトをご確認ください。
WEBSITE:www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202410_conran.

【THE CONRAN SHOP INSPIRATIONS for the NEXT】
DATE:10月27日(日)まで開催中
TIME:11:00am~9:00pm
※祝祭日は8:00pmまで
PLACE:ザ・コンランショップ 丸の内店
ADDRESS:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング3階・4階
ADMISSION FREE

SHARE

PICK UP