DESIGNART TOKYO 2023 Report

Top Right Photo:“LETTRE À HERMANN SCHERCHEN” FROM ‘GRAVESANER BLÄTTER 6’ FROM IANNIS XENAKIS TO HERMANN SCHERCHEN (1956) 2006年 Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris, Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
Top Above Photo:崔在銀 | 《白い死》展示風景 | 2023年 ©Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
Top Bottom Photo:©Nacasa & Partners ASIA CREATIVE RELATION Powered by THE LIONS

DESIGNART TOKYO 2023 Report

クリエイティブの祭典で注目の6展示をご紹介

都内各所で10月29日(日)まで開催されている、日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2023」。
世界中からアートやファッション、インテリア、テクノロジー、フードなど多彩なジャンルをリードする才能が集結し、東京の街を歩きながら多彩な展示を楽しめる。

今年はLula Japanが、本イベントのメディアパートナーとして参加。
さまざまなアイデアが光るプログラムの中から、編集部がピックアップする6つの展示をレポートします。

1. Exhibition|Gala Espel

Gala Espel ©Gala Espel ARCHAEOLOGY OF THE FUTURE (AOF)
Gala Espel ©Gala Espel ARCHAEOLOGY OF THE FUTURE (AOF)
Gala Espel ©Gala Espel ARCHAEOLOGY OF THE FUTURE (AOF)

「DESIGNART TOKYO」の発起人たちが、将来が期待される30歳以下の5組のクリエイターを独自の目線で選出する「UNDER 30」。
本プログラムに今年選出された、フランスの建築家兼デザイナー Gala Espelのエキシビション「Archaeology of the Future」がTIERS GALLERYで10月29日(日)まで開催されている。


Gala Espelは、パリのカモンドデザイン学院で建築を、スイスのローザンヌ州立美術大学院で造形を学び、現在はパリと東京を拠点に活動中。
その創作はリサーチやフィールドワークに基づいており、各地域の伝統的な工芸に触れてきた経験による多文化的な視点から、産業とクラフトの関係、モノそのもの、モノと人類、その日常との関わりについて考察し続けている。

今回披露された「Archaeology of the Future」 は、考古学の切り口で未来から見た現在を表現した作品。

貝殻や花などの自然物、日常的な既存品を考古学の写真測量ツールを用いてスキャンしたフォルムが、熟練の技術を持つ銀細工職人 Nicolas Marischaelと宝石職人 Surya Mathewとの共同制作によって、幻想的なフォルムの美しいオブジェに仕上げられた。

それらは過去と現在、未来の時間を往還し、デザインの力によって私たちを取り巻く世界を再認識させながら、悲観に陥らない作家の眼差しも感じさせる。

2. Exhibition|ARTEK with Formafantasma

Formafantasma Cambio on Finnish forestry
Artek Stool 60 Villi Alternative 1 cut-out

1933年にAlvar Aaltoによってデザインされた「ARTEK」の「Stool 60」誕生から90周年を記念し、その歴史を紐解く展示とデザイナーデュオ Formafantasmaが手がける新作の販売が、CIBONEで11月5日(日)まで開催中。


シンプルかつ機能に従事した構造、あらゆる人に手が届くよう計算された合理的な生産手法によって、世界中で愛されるデザインとして人々の暮らしの中に息づく「Stool 60」。
今回、2009年にスタートしたイタリアのデザイナーデュオ Formafantasmaによって、これからの未来を見据えた新作「Stool 60 Villi」が発表された。

木材を使用した製品の起源、生産、流通をリサーチする彼らの近年のプロジェクト「Cambio」をきっかけとして生まれた本作は、すべてフィンランドの木材から生産されている「Stool 60」に対し、さらに資源を無駄なく有効に使用していくための回答を提示している。


また初日の10月20日(金)には、「ARTEK」社長 Marianne Goebl とFormafantasmaによるトークショーが開催され、過去、現在、未来のプロダクトのあるべき姿について語られた。

Formafantasmaは、完璧な製品が求められ、木の節や昆虫の痕跡などによって生産プロセスの中で多くの素材が除外されてきたこれまでの状況に対し、「選択基準を変え、美的な論点だけによらず色々な素材をインクルーシブに使う」ことで、伐採される木の量を減らすことができると指摘。

また今後のプロダクトデザインの在り方については、「消費者がいかに喜ぶかという点からエコロジーの方向に根を下ろしつつある」という時代のパラメーターシフトに言及し、社会と深い関係性にあるデザインに向き合う誠実な姿勢が示された。

さらに会場では、「Stool 60」の90年の歴史を辿る展示「Decades」も行われている。

3. Exhibition|ASIA CREATIVE RELATION Powered by THE LIONS _ A NEW HORIZON

©Nacasa & Partners ASIA CREATIVE RELATION Powered by THE LIONS
Dongwook Choi, Crest and Trough Bench
CLEVERCLAIRE

東アジア出身のデザイナーによるコンテンポラリーな作品を紹介し、デザインとライフスタイルの未来のトレンドを考察する「ASIA CREATIVE RELATION Powered by THE LIONS _ A NEW HORIZON」が、ワールド北青山ビルにて10月29日(日)まで開催中。


ゲストキュレーターのSuzy Annettaは、日本、韓国、中国、台湾のデザイナーたちの作品を4つのチャプターに分類。
それらは私たちが何と、どのように、なぜ、共に暮らすことを選ぶのかという問題に向き合う中で、自然に導き出されたという。

自然から生まれた抽象的な形態やイメージを指す「Biomorphism(バイオモーフィズム)」のチャプターで展示されているのは、現代的な方法で自然の形態と結びつけられた作品群。
韓国の建国大学で金属工芸の学士号を取得したDongwook Choiによる「Crest and Trough」シリーズのベンチは、2つの波が出会う時の干渉パターンにインスパイアされたもので、自然環境の中で発見した1つの美が物質化されている。


その他、リサイクル素材や端材、余剰品を使用した「Upcycled(アップサイクル)」、人々が喜びを希求するポストコロナの世界を思わせる「New Belle Epoque(新しいベル・エポック)」、伝統的な技術や手法、素材などを保存・保護し、文化の歴史を後世に伝える「Future Traditions(未来の伝統)」と続く各チャプターを通して、先端を行くデザイナーの現在の考え方や、その哲学的アプローチや実践についての理解が深められる。

4. Exhibition|Eri Morita

Eri Morita "Yellow Trucks" California, USA, 2013
Eri Morita "Monarch Butterflies and Watermelon" California, USA, 2013
Eri Morita

熊本県生まれの写真家 守田衣利の写真展「Serendipity in Family and Everyday Life」が、「TORY BURCH」銀座店にて11月2日(木)まで開催中。


本展のタイトルに用いられた「serendipity(セレンディピティ)」という語は、思いがけず素敵なものに出会うこと、また探していたものとは別の価値があるものを偶然発見することを意味する。

2000年以降、アメリカと日本を行き来しながら、家族と日常をテーマに写真を撮り続けてきた守田衣利。
異なるシリーズの写真を織り交ぜて展示する本展では、生まれ故郷である熊本とビビッドなカリフォルニアの景色が呼応するように、守田の家族との時間が紡がれた。

それらはパーソナルな記録でありながら、鑑賞者に「昔こういう光景見たな、家族でこんなことしたなと古い記憶を呼び覚ますようなセレンディピティであってほしい」という作家の願いが込められている。

5. Exhibition|Jaeeun Choi

崔在銀 | 《白い死》展示風景 | 2023年 ©Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
崔在銀 | 「ある詩人のアトリエ」より《内なる光》展示風景 | 2023年 ©Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
崔在銀 | 「ある詩人のアトリエ」より《私たちが初めて会った時》展示風景 | 2023年 ©Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès

人間の生やモノについて自然との関わりからアプローチするアーティストたちを、2つのダイアローグ形式で紹介するエルメス財団主催の「エコロジー:循環をめぐるダイアローグ」展。

アートにおけるエコロジーの実践を問う本展のダイアローグ1として、韓国・ソウル出身のアーティスト Jaeeun Choiの個展「新たな生」が、銀座メゾンエルメス フォーラムにて2024年1月28日(日)まで開催されている。


1976年の来日を機に前衛生け花に魅せられたJaeeun Choi は、草月流の3代目家元 勅使河原宏への師事を経て、1980年以降は一貫して生命の循環や時間をテーマとした作品を制作。

本展は、世界7ヶ国に和紙を埋めたのち時を経て掘り起こす現行のプロジェクト「World Underground Project」や白化したサンゴを用いた「White Death」など、その過去作と新作を展示する。

生存に関わる自然生態系の真実を直視し、深い洞察に基づく独自の活動を続けてきた1人の作家の視点によって、会場には自然との理想的な共存関係の再構築への思索を導く空間が立ち現れている。

6. Exhibition|Cerith Wyn Evans

CERITH WYN EVANS - L>espace)(…, Exhibition view at Espace Louis Vuitton Tokyo (2023)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris, Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
CERITH WYN EVANS - L>espace)(…, Exhibition view at Espace Louis Vuitton Tokyo (2023)
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris, Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton
“LETTRE À HERMANN SCHERCHEN” FROM ‘GRAVESANER BLÄTTER 6’ FROM IANNIS XENAKIS TO HERMANN SCHERCHEN (1956) 2006年
Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris, Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

ウェールズ出身のアーティスト Cerith Wyn Evansによる個展「L>espace)(...」が、ESPACE LOUIS VUITTON TOKYOにて2024年1月8日(月)まで開催中。


映像作品の制作を経て、90s初頭に彫刻またはインスタレーションに分類されるさまざまなメディアを用いた作品に移行したCerith Wyn Evans。
動きやテキスト、音を自在に置き換えたり、可視性の限界や空間における形の顕在化について探求したりと、他に類を見ない作品を展開してきた。


本展には、コンピューターに流れる作曲家 Iannis Xenakisの手紙などの引用文をモールス信号の点滅で伝える「“Lettre à Hermann Scherchen” from 'Gravesaner Blätter 6' from Iannis Xenakis to Hermann Scherchen (1956)」をはじめ、詩的で謎めいた5作品が集結。

空に浮かぶガラス張りの異空間のような会場で、ポスト象徴主義や前衛文学の遊びの要素や難解な側面を辿りながら、多義的で曖昧な意味の領域を探求することができる。

無数のクリエイションが交差する秋の東京。
この先の社会を照らす思考がボーダーレスに繋がり、新しい豊かさが紡がれる。



DESIGNART TOKYO COMMITTEE
designart.jp



【DESIGNART TOKYO 2023】
DATE:10月29日(日)まで開催中
PLACE:表参道・外苑前・原宿・渋⾕・六本⽊・広尾・銀座・東京
WEBSITE:designart.jp/designarttokyo2023/

【Gala Espel “Archaeology of the Future”】
DATE:10月29日(日)まで開催中
TIME:11:00am~7:00pm
PLACE:TIERS GALLERY
ADDRESS:東京都渋谷区神宮前5-7-12
ADMISSION FREE

【ARTEK with Formafantasma “Past, Present, Future90 years old Stool 60”】
DATE:11月5日(日)まで開催中
TIME:11:00am~8:00pm
PLACE:CIBONE
ADDRESS:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 地下1階
ADMISSION FREE

【ASIA CREATIVE RELATION Powered by THE LIONS _ A NEW HORIZON】
DATE:10月29日(日)まで開催中
TIME:10:00am~6:00pm
PLACE:ワールド北青山ビル
ADDRESS:東京都港区北青山3-5-10
ADMISSION FREE

【Eri Morita “Serendipity in Family and Everyday Life”】
DATE:11月2日(木)まで開催中
TIME:11:00am~8:00pm
PLACE:「TORY BURCH」銀座店
ADDRESS:東京都中央区銀座4-3-11
ADMISSION FREE

【Ecology: Dialogue on Circulations - La Vita Nuova by Jaeeun Choi】
DATE:2024年1月28日(日)まで開催中
TIME:11:00am~7:00pm
※入場は閉場の30分前まで
PLACE:銀座メゾンエルメス フォーラム8・9階
ADDRESS:東京都中央区銀座5-4-1
ADMISSION FREE
※ギャラリーは基本、「HERMÈS」銀座店の営業に準じています。

【Cerith Wyn Evans “L>espace)(...”】
DATE:2024年1月8日(月)まで開催中
TIME:12:00pm~8:00pm
PLACE:ESPACE LOUIS VUITTON TOKYO
ADDRESS:東京都渋谷区神宮前5-7-5 LOUIS VUITTON表参道ビル7階
ADMISSION FREE

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