Yuhki Touyama
残された写真を通して続く対話
写真家 頭山ゆう紀の個展「残された風景」が、PURPLEにて4月6日(日)まで開催中。
1983年に千葉県に生まれ、東京ビジュアルアーツ写真学科を卒業した頭山ゆう紀は、生と死、時間や気配など目に見えないものを捉えた写真を特徴とする。
自室の暗室でプリント作業を行い、時間をかけて写真と向き合うことで制作される彼女の作品には、時間の束や空気の粒子が立体的に表現されている。
「残された風景」は、頭山の亡き祖母の在宅介護の時間に撮影された写真群。
本シリーズは、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」の石内都との2人展「透視する窓辺」で一部分が発表され、2024年には同タイトルの写真集も刊行された。
コロナ禍での介護の日々という閉ざされた状況の中、近所に買い物に出るわずかな時間に切実な息抜きとして撮られたそれらは、瞬間の光と色が射すカラーの風景写真。
一方でモノクローム写真には、家から出られなくなった祖母の幻覚が見えるという視線に寄り添うように、部屋の窓から捉えた庭の景色が収めらた。
この2つの視点が混ざり合い構成された「残された風景」には、祖母の姿は写っていない。
介護する側とされる側とがそばにありつつ、異なる時間を過ごしていたことが視点に克明に表れており、残された写真は不在を告げると共に、残された者にとって祖母との対話を続ける拠りどころとなった。
不在の人を理解する過程とも言える本作は、喪失を超え、人が人をケアすること、そして続いていく対話へと開かれている。