Paul Graham
人生の儚さと向き合う眩い作品集
イギリス人フォトグラファー Paul Grahamの作品集「Verdigris / Ambergris」が発売中。
1956年にイングランド・スタッフォードで生まれたPaul Grahamは、ドイツ証券取引所写真財団賞やグッゲンハイム・フェローシップ、ハッセルブラッド国際写真賞、過去15年間で最も優れた写真集に贈られるパリフォト・アパーチャー財団フォトブックアワードなど、数々の賞やフェローシップを受賞。
「The Whiteness of the Whale」や「Does Yellow Run Forever?」、「A Shimmer of Possibility」といった著書の他、テート美術館、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館やスイス・ヴィンタートゥール写真美術館など各国で展覧会を開催している。
今作は、Grahamが命の儚さや死すべき運命に対して向き合ったシリーズ。12年かけて制作し続けた作品群を完結させ、すべて「Verdigris」と「Ambergris」の2冊に収めた。
自由の女神像に見られる酸化銅の青錆である「Verdigris(緑青)」の大陸と、鯨から採れる希少かつ神秘的な産物である「Ambergris(龍涎香)」の海を見わたし、果てしなく広がる水平線へと目を向ける人々を中心に捉えた、対となる兄弟のような作品集となっている。
瞑想的なポートレートと交互に、第1巻では桜のイメージ群が、第2巻では沈む太陽のイメージ群が並ぶ。
桜は作者が過去7年間にわたり拠点としているニュージャージー州の脱工業化地帯を見下ろす公園で、落陽は日の入りを眺める古い伝統を持つロング・アイランド島の北岸沿いで撮影された。
Grahamは自然の美しさの典型とも言えるものと、その観察者を取り上げ、私たちがいかにして世界の美しさを経験するかを多層的に分析。
水平線を見つめる人々のポートレートはマジックアワーの明澄感と共に写されているものの、その間に挟み込まれる桜や日没は、制作過程で破損してしまう。
「Verdigris」の桜は微妙に推移させた複数の細かな露光を用い、超解像度に設定したデジタルカメラで撮影された。
しかしその写りは、そよ風のささやかな動きに乱され、まとまった表現を組み立てられずにいる。
一方で「Ambergris」の再度の高い夕暮れは、近い画素数から近似的な色を得るのではなく、各画素で色彩情報を拾うカメラが用いられている。
限界を超えて撮影されたそれらのイメージは、圧倒的な情報量の力で人工的な芸術の色彩に染まっている。
ツールの欠点から浮き彫りになる、美につきまとう劣化と終焉。
眩い自然美と視線が交差する、泡沫の時に包まれて。
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twelve-books.com
【Paul Graham “Verdigris / Ambergris”】
PRICE:¥19,800
AVAILABLE TO BUY FROM:twelve-books.com/products/verdigris-ambergris-by-paul-graham
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