【SPECIAL】Book List 02|Elena Tutatchikova
Lula Japan最新号をさらに楽しむために読みたい3冊
Lula Japan Issue 21の世界を深掘りできる書籍を紹介する特別企画。
感性を目覚めさせ、思考を増幅させてくれる、とっておきの本たち。
ページを繰る先には、さらなる無数の出合いが待っている。
第2回は、今号のテーマ「錫色」に連なる新たなドローイングを描いてくれたアーティストElena Tutatchikovaの書籍2冊と、彼女が今春参加した展覧会のカタログ1冊をお届け。
歩く、見る、描く、捏ねる、書く、聴く——さまざまな営みを通じた彼女の瑞々しい表現は、この世界の中の美しさに気づかせてくれる。
Book 01|After an Apple Falls from the Tree, There is a Sound
幼少期の記憶をテーマにした2016年刊行の1作目の作品集「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」。
2009年からTutatchikovaが継続的に撮り溜めてきた、自然豊かなモスクワ郊外の村で夏を過ごす兄妹たちの日々が収められている。
タイトルの「林檎が落ちる音」は、いつの間にか始まり去っていく夏や、知らず知らずのうちに成長する少年少女たちのような、普遍的でささやかな変化を暗喩する言葉。
美しいロシアの夏の風景に包まれた写真は刹那的でありながら懐かしく、ひとりひとりの記憶の奥に柔らかく触れる。
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Book 02|I Hear, Says the Wind
2022年刊行の「聴こえる、と風はいう」は、2019年からの3年間に制作された作品で構成される2作目の書籍。
Tutatchikovaの日々の営みの中から生まれたドローイング、セラミック、詩やエッセイ、インスタントフィルム写真など、さまざまな作品が収録されている。
土を捏ねてはその息遣いに耳を澄ます。ノートとペンのあわいを走る線を辿る。歩きながら道の声を聴く。そうして地図を紡ぐ——多様な形を通って表れてくる、彼女の経験する時間を感じられる1冊。
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Book 03|Does the Future Sleep Here? ——Revisiting the museum’s response to contemporary art after 65 years
1959年の開館以来、国立西洋美術館で初の現代美術展として今年の春に開催された「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」。
展覧会カタログには、「同館は『未来の芸術』を育む場になり得てきたのか?」、「美術館はこれからどのような役割を果たし得るのか?」といった問いに参加作家たちが応答したインタビューが掲載されている。
本展の第5章「ここは作品たちが生きる場か?」で、美術館の中を迷い歩いた経験から構想した詩、セラミック、映像作品から構成したインスタレーションを披露したTutatchikovaのインタビューでは、彼女の制作活動の根幹にある「歩く」という行為を紐解いていく。
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Elena Tutatchikova:
1984 年、ロシア・モスクワ生まれ。クラシック音楽や日本の文学を学んだのち2012年に来日し、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現領域博士後期課程を修了。
人間としていかに世界を知覚し、想像できるかを問いながら、歩き、考え、経験したことを絵画やセラミック、言葉、映像、写真などの作品を通して表現する。現在は京都市を拠点にしながら、さまざまな土地で活動中。著書には写真集「林檎が木から落ちるとき、音が生まれる」(2016)と作品集「聴こえる、と風はいう」(2022)。
また京都府のMtK Contemporary Artでの2人展「湖といえば、泳ぐ電子の軌跡」(2024)、東京都のPOSTでの個展「On a Windy Path | 風の音が道になって」(2024)など、数々の展覧会を開催している。
elenatutatchikova.com