第1回は、今号のテーマ「錫色」から新たな作品を制作してくれた写真家 Jim Goldbergの3つの作品集をピックアップ。
国際的写真家集団 Magnum Photosの正会員を務め、アメリカの現代写真界を牽引し続ける彼の、長きにわたる軌跡を辿って。
Book 01|Coming and Going
サンフランシスコの貧困層と富裕層を撮影した「Rich and Poor」(1985)や、路上で生活する少年少女たちを捉えた「Raised by Wolves」(1995)など、社会的なドキュメンタリー作品で知られるGoldberg。
その彼がユニークな自叙伝として昨年出版した最新作「Coming and Going」は、1999年から20年以上にわたって撮影してきた日常的な写真に、彼独自の手法として知られるコラージュやテキスト、モンタージュを加えた作品群で構成される。
それらは1つの物語となって、両親の死がもたらした悲しみ、大きな変化をもたらした子どもの誕生、離別による傷心、そして愛の再発見を通じ、波乱を含んだ彼の人生の道筋を描く。
Goldbergのビルドゥングス・ロマン(自己形成の物語)を描く3部作のシリーズの第2作として、2016年に刊行された「The Last Son」。
ニューヘイブンで菓子の卸売業を営んでいた父親の夢、そしてその末息子である自らの形成期の物語を辿り直した1冊となっている。
2014年、代表作「Rich and Poor」(1985)の改訂版の出版に際し、子ども時代が自身の作品に与えた影響を徹底的に検証した彼は、本作で写真、コラージュ、手書きの文章、ホームムービーから採ったスティルライフなど自らのアーカイブを掘り起こし、それらを織り交ぜることで視覚的な旅を作り上げた。
Jim Goldberg : 1953年、アメリカ・コネチカット州生まれ。カリフォルニア美術大学名誉教授。2002年よりMagnum Photosに参加し、2006年から正会員を務める。40年以上にわたって社会の周縁に目を向けたドキュメンタリーを中心に制作を続け、写真とテキストを織り交ぜた独自の手法を確立。これまでにドイツ証券取引所写真財団賞をはじめ多数の賞を受賞し、作品はニューヨーク近代美術館など世界の主要美術館に収蔵されるなど、現代アメリカを牽引する写真家の1 人として知られている。2023年、20年以上をかけて制作してきた作品群で構成される自伝的写真集「Coming and Going」を出版。 jimgoldberg.com