Christopher Loden

Christopher Loden

感情や願望を「封印」したジュエリー作品

現在東京で活動するジュエリーデザイナー兼仕立て屋 Christopher Lodenによる個展「Once Upon/Over」が、TAV GALLERYにて8月2日(土)まで開催中。

「ファッション」とそれが身体に与える影響を、社会の枠組み、メディア、置かれている環境などから考察するChristopher Loden。

オーダーメイドのジュエリーを制作する傍ら、プロップのスタイリングにも携わり、これまでグループ展への参加や個展の開催を重ねてきた。

歯科医師の家庭に生まれ、身体の「欠落」と「補完」をテーマにした作品を生み出す彼女は、象徴的な記号を巧みに操りながら、独自の解釈で物語を紡ぐような創作を好む。

本展では、身体性と感情の境界を問い直し、Lodenが長年探求してきた「憧れ」、「記憶」、「理想」を物質化したジュエリーやぬいぐるみの彫刻作品、インスタレーションを展示。

「Once Upon/Over」というタイトルは、物語の始まりを意味する「Once Upon」に、物語が終わった後に残る空虚や余韻、変容を象徴する「Over」を組み合わせている。
それは、物語の力学、つまり構築され、抑圧され解放へと向かう過程を反映していると言える。

Lodenの作品は、物語の中で幾度も語られてきた理想から逸脱し、その影に潜む孤独や喪失と向き合わせることを目的とする。
また彼女自身が思い描く「理想」を再び手作りで再構築する行為は、呪いのように残された物語を私的な神話へと変換する儀式でもある。

本展で発表されるジュエリー作品群は、童話のプリンセスのようなモチーフを、それらに潜む「閉じ込められた記憶」を封印する装置として表現したもの。

ガラスドームに封じられたバラや、「Sleeping Beauty(邦題:眠れる森の美女)」のベッドリングといった作品は、「保存」と「変容」の二義的な意味を、ジュエリーという最も身体に近いメディアによって可視化する。

またぬいぐるみの彫刻作品では、身体の一部を縫い合わせて修復と破壊を繰り返すことで、異形の身体を再構築。
本来は無垢で愛着を抱くべき存在であるぬいぐるみが、理想像や恐れを投影された装飾となり、装飾が感情の延長線上にあることを示している。


感情や願望が形作る、神話性をまとった作品群。
従来の物語を超えて守るべきものを問う、Lodenの新境地を目撃して。


TAV GALLERY
tavgallery.com



【Christopher Loden “Once Upon/Over”】
DATE:8月2日(土)まで開催中
※日曜、月曜休廊
TIME:1:00pm~7:00pm
PLACE:TAV GALLERY
ADDRESS:東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4階
ADMISSION FREE
WEBSITE:tavgallery.com/christopher_loden

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