Top Photo:山元彩香「Untitled #430, Kvemo Kartli, Georgia」 2023 年, C プリント © Ayaka Yamamoto
世界各地で撮影を行う写真家 山元彩香の個展「Sand, Water and Dust」が、タカ・イシイギャラリーにて10月26日(土)まで開催中。
1983年、兵庫県神戸市に生まれた山元彩香は、京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース在学中に絵画から自身の身体を使ったパフォーマンス作品や映像作品の制作に移行し、サンフランシスコ留学を機に写真の制作を開始。 言語によるコミュニケーションが難しい状況下での撮影は、写真というメディアの性質以上に他者とのさまざまな接点を彼女にもたらし、その後もなじみのない国や地域に出かけ、出会った少女たちを撮影するようになる。 そのポートレートを通じて、その身体に潜む土地の記憶と身体というものの空虚さを写真にとどめようとしてきた。 最近では、人間がその土地を反射する鏡のような存在であると考え、同じ土地で長く暮らす人々を観察すると、彼らがまるでその土地のポートレートのように見える瞬間があるという。
本展では、ヨーロッパとアジアの境界に位置し、独自の文化と歴史を持つ国 ジョージアで2023年に撮影された作品群を発表。 作品の制作過程で山元は、ジョージアに紀元前2000年や紀元前1世紀から存在した、自然に囲まれた集落の跡を訪れた。 タイトル「Sand, Water and Dust」は、山元が被写体に対して行うさまざまな質問の1つである、自分を構成する要素についてある少女が挙げた回答であり、写真家自身の感覚にも最も近かったもの。 宗教儀式で多用され、意識と無意識の境を繋ぐ象徴として循環する物質世界の中心的な素材である「砂」、生命を育む無機物「水」、そしてジョージアの街に舞う土埃やソビエト時代からの崩壊寸前の住宅を喚起する「埃」。 さらに英語の「dust」は遺骨や埋葬地を示唆し、古代英語では人間の基本的な物質として無機物と有機物の中間とされる。 本展は、ポートレート作品と被写体に関連する風景写真を2枚1組で展示するという作家にとって新たな試み。 2枚の作品はそれぞれ独立した作品であっても、併置されることでより被写体の内側深くにある土地の記憶に干渉するような作品へと昇華される。 人と自然と文化とが豊かに関わり合うジョージアの風土に感化された作家が、人間が持つ普遍的な自然観や性質にも目を向けたことが窺え、自然と人間の繋がりは切り離すことができないのだと再認識させる。
土地と人が等価になり得る、新たな切り口で制作された写真群。 異国の地でとどめられた、自然と人間の本質に触れて。 TAKA ISHII GALLERY 03-6434-7010 【Ayaka Yamamoto “Sand, Water and Dust”】 DATE:10月26日(土)まで開催中 ※日曜、月曜、祝日定休 TIME:12:00pm~7:00pm PLACE:タカ・イシイギャラリー ADDRESS:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2階 ADMISSION FREE WEBSITE:www.takaishiigallery.com/jp/archives/32942/
ポートレートに写る根源的な繋がり
新進作家たちが紡ぐ、地に沁みつく記憶と身体の関係
空の器としての身体に宿る、言葉にならざる歌
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