Syuya Aoki
偶然の集積から生まれたプロジェクト
写真家 ⻘木柊野の個展「cejitos(AS1211)」が、HECTAREにて8月12日(土)まで開催中。
2017年の「hill」を皮切りに実験的な作品を数多く発表し、近年のパーソナルワークでは記録や具象といった写真の特性の対極にある表現を行う⻘木柊野。
薬剤を用いたエフェクティブなフィルム写真や、古いパソコンのストレージ容量に負荷をかけて生じたバグをキャプチャする手法、撮り溜めた無数の写真にAIを用いた図像の生成方法など、制作を通じて写真表現の拡張を試みてきた。
アナログから人工知能まで幅広く取り入れたそのアプローチは、写真史における現況と自覚的に向き合い続ける彼の姿勢を示している。
今展は、昨年行われた展覧会から始まった「cejitos(M1135)」というプロジェクトの一環。
「cejitos」は⻘木がキーボードを無意識にタイピングした文字列で、検索するとアメリカのワシントン州テニオという小さな街にある保護施設 Wolf Haven Internationalで暮らす1匹のオオカミの名前がヒットし、タイトルとして採用された。
また、青木は前回の展覧会の設営の際に、ギャラリーに迷い込んできた1羽の蛾と出会う。
蛾は会場に卵を植えつけてほどなくしてその生涯を終えるも、卵から幼虫が産まれて蛹へと成⻑し、彼はそれをきっかけに何かに導かれるようにcejitosが暮らす地域を訪ね、写真として記録した。
奇しくも蛾はその地域の先住⺠の間で神聖な存在として扱われており、このエピソードが象徴するように、数々の偶然の集積によって生まれた「cejitos」は今もなおアップデートし続けている。