Sachiko Morita
水彩画紙に映る、好奇心が捉えた時の流れ
フランス・アンジェ在住のアーティスト 森田幸子の最新作品集「Time in Air, Time in Paper」が、インディペンデントパブリッシングハウス Cairo Apartmentより発売。
さらにこれを記念した展示会が、POSTにて1月22日(日)まで開催中。
フランス・ナントの美術学校 エコール・デ・ボザールへの留学を機にオブジェの写真を撮り始め、現在も自身のアトリエで古くからある素材を使いながら実験を重ね、独自のプリント方法を考察し続ける森田幸子。
イタリア製水彩画紙に刷毛で感光剤を塗布し、自らの印画紙を作ることから始まるというユニークな制作プロセスは、被写体である花や果実に近い質感を生み出し、手作業ならではの個性を作品に宿している。
また、ガーデナーとしての一面も持ち合わせ、野菜や植物を育て種子を採取する丁寧な作業には、森田の制作の原点が垣間見える。
彼女の作品は、写真的側面と絵画的側面の2つが存在する、ドローイングのような直感的な輪郭が特徴。
その2つの表情を意識した今作では、過去20年以上にわたる51作品を再編し、水彩画紙に映る素朴な時の流れを捉えることを試みた。
「現実と過ぎ去る時間」に記憶を巡らせ、視覚だけでなく感覚でも鑑賞することの喜びが堪能できる1冊となっている。
さらに作品集の刊行にあわせ、POSTにて展示会が開催され、会場ではブックサイニングイベントも予定している。