Mari Katayama
転期を反映した6年間の軌跡
アーティスト兼写真家 片山真理の作品集「SYNTHESIS」が発売。
裁縫や写真、絵画など多岐にわたるメディアを用いて「自然、人工、正しさ」といった社会の規範的な考えを映し出し、それを問う作品を制作してきた片山真理。
彼女は初の海外個展を行った2019年、アートの世界もまた「2本足で立つ」ことありきで成り立つ場所であることを痛感し、そこで生き抜く決意を新たにしたという。
以降、世間一般の固定概念やルールに疑問を投げつつもそれと共に生きる方法、血族や契約にとらわれない家族やコミュニティの在り方、身体的にも経済的にも「地に足をつけて立つ」こと、またその術を模索してきた。
本書に収められたのは、娘の誕生や故郷である群馬への帰還という重要な出来事を経験した過去6年に、片山が自宅スタジオで撮影した9つの写真シリーズ。
それぞれの作品は静止した状態や完成形ではなく、ページをめくるごとに変化し、繋がり、そしてあらゆる方向に成長し続ける命の力強い流れとして展開されている。
それは過去と未来、始まりと終わり、存在と不在といった相対するものが同時に存在し、超越されていくような、哲学的概念としての「合成(synthesis シンセシス)」のプロセスにも重なる。
また写真作品の下敷きになったドローイング作品や、書き下ろしのショートエッセイも英語と日本語で掲載。
木の枝や根のように拡がり続けているこれまでの6年間の制作活動を、1冊の本というまとまった流れの中で体験できるアーティストブックとなっている。