17世紀前半に作られた日本で初めての磁器である初期伊万里の陶片を介した、過去と現代の陶工のものづくりをめぐる対話から形作られた今コレクション。

デザイナー 黒河内真衣子は、佐賀県有田町で初期伊万里が興隆した数十年の歴史を再訪しながら、作風の和洋化と個性化、その裏にある試行錯誤や染付が語る日常への目線を学んだ。
そして記憶の欠片と白磁素地のあわいから立ち上がる物語が、「Fragments」をテーマに多様な洋服へと翻訳された。

コレクションを彩るキーカラーとしてワードローブを染め上げたのは、さまざまなトーンや質感のホワイト、エクリュ、ミントグリーン。
かつての陶工たちが恋焦がれた素地の色である「白」を生み出す過程で生まれた初期伊万里の淡いトーンからインスピレーションを得て、情感豊かな涼やかさを持って表現された。

そして「やきものを洋服へと変換」する試みは、美しい初期伊万里の佇まいを想起させるスタイルを形成。
ガラス質の半透明な釉薬が素地に絡みつき柔らかな輝きをたたえる姿は、シアーなラメジャージのシリーズによって表現され、紋様入りの型を押し当て、柄を浮かび上がらせる技術である「陽刻」は、特殊なエンボス技術によってデニムパンツやデニムジャケット、オーバーサイズシルクコットンドレス、シャツの上でのびのびと躍動している。

また、陶片に描かれた山水や花鳥の風韻は、黒河内の記憶と混じり合い、ブランドのシグネチャースタイルであるドレスやジャンプスーツ、シルクのコート、セットアップなどに投影され、同一平面上に配されたさまざまなモチーフが過去から現在、現在から過去へと往還する振幅によってノスタルジーの世界へと誘う。

さらに、いくつかのルックにディテーリングされた2種の陶器ボタンは、佐賀県有田町の小物成窯と陶芸作家の下、黒河内の手により形作られ、コレクションを引き締める重要なフラグメントとなった。

日本磁器のあけぼのを映し出す、複層的なコレクション。
過去と現在を行き交う考古学的探究の欠片を、柔らかにまとってみては。



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