Creators’ Notebook  No.6 Min Kim

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Art directors : Lies Scheps / Director of Photography : Edward Vijay / Make up : Melanie Christou / Model : Eve at NEVS

Creators’ Notebook No.6 Min Kim

ファッションデザイナーが綴るノートの中身

若手デザイナーの登竜門として毎年開催される世界各地の卒業制作ファッションショーは、ファッション界のあらゆる方面から注目を集めて止まない。
フレッシュなデザイナーたちが生み出す瑞々しいクリエイションは、時に人々をエキサイトさせる。

ここでは、そんな彼らの自由奔放な脳裏を覗き込むように、独自の個性やクリエイティビティの軌跡が記されたノートブックに注目。
編集部が今、気になるクリエイターをピックアップし、インタビューを行った。

No.6 Min Kim

−まずはじめに、最新の作品について教えて下さい。

常々取り組んできたことではありますが、卒業後はヴィジュアルワークを作ることに専念しています。
最新のヴィジュアルワーク作品は、私の新しいチームクルーとともに取り組んだ、ある雑誌のためにパリで撮影したものになります。
それは、ゴージャスで成熟した雰囲気をまとった1人の女性のライフストーリーがテーマでした。
私たちは他にも、短いドキュメンタリー映画やファッションフィルムを作っています。

デザイナーとしての最新作は「Confessions of a weekend drinker(あるウィークエンド・ドリンカーの告白)」です。
それはセントラル・セント・マーチンズ(以下、CSM)の卒業制作ショーで発表した、最後のコレクションでした。

Left picture−Art directors : Lies Scheps / Director of Photography : Edward Vijay / Make up : Melanie Christou / Model : Eve at NEVS
Right picture−Photographer : Noemi Ottilia Szabo / Styling : Petra Haller / Hair : Lilith Amrad / Make up : Annina Steinseifer / Model : Anna Pravorotskaya at Option model agency
Art directors : Lies Scheps / Director of Photography : Edward Vijay / Make up : Melanie Christou / Model : Eve at NEVS
Left picture−Art directors : Lies Scheps / Director of Photography : Edward Vijay / Make up : Melanie Christou / Model : Eve at NEVS
Right picture−Photographer : Annie lai / Make up : Melanie Christou
Made by Min Kim

−どのようにして現在のスタイルを築き上げましたか。

デザイナーでいる時もヴィジュアルメーカーでいる時も、常に自分自身の心の声に耳を傾けるようにしています。
例えば、どんな気分や感情を今自分は持っているのか、といったことです。
そして、その感情を、もっともっと深く掘り下げていきたい。

私は個人的にViceでドキュメンタリーを見たり小説を読んだりすることが、エキシビションに行くよりも好きです。
その習慣のせいもあり、仕事においても物語を語ることが好きで、それが作品にも反映されています。


−大学時代の生活で最も印象に残っている経験は何ですか。

おそらく、CSMの人たちと出会えたこと。
CSMは生徒たちに特定のやり方で教えるというよりも、自身のスタイルを自由に探させるということでとても有名です。
私は才能にあふれた友人と出会い、彼らと私たちの情熱に関して語り合うことでたくさんのことを学んだと思います。
CSMの全体的な雰囲気は、自分たちのアイデンティティを探求させるものを持っていますね。

そして、言うまでもありませんが、素晴らしい図書館を持っています。
そこで膨大な本や雑誌を読むことで、私自身もとても成長したと思いますし、それが自分の美学やアイデンティティを見つける手立てにもなったかと思います。

−作品を制作している中で、最もワクワクする瞬間はいつですか。

私はリサーチする過程がとても好きです。
自分が取り組みたいと思えるインスピレーション源や、「どんな物語が隠れているんだろう」と多くのことを想像させるようなイメージに出会った時に心が躍ります。
先ほど言ったように、私は物語やその登場人物の感情や習慣にフォーカスを当てています。

私にとって、作品は映画を撮ることに似ていますね。
自分のミューズがいる、その空間の匂いはどんなものなのだろうとか、彼女はどんな音楽を聞くのだろうとか、そういうことを知りたい。
リサーチは私にとってすべてなのです。


−今まで影響を受けたデザイナーやアーティストはいますか。

正直、特に誰という方はいません。
ですが、全般的にさまざまな人のライフストーリーを聞くことには熱中して取り組んでいます。

また、ライフストーリーにまつわるリサーチやインスピレーションを得るために、たくさんのドキュメンタリーを見るのも好きです。
例えば、CSMのファッションショーの最終プロジェクトを手がける際は、「The girl on the train」という小説に出てくるある登場人物に感化されました。
彼女はただの会社員なのですが、実はアルコール依存症という役どころ。
この架空の人物は私のそのプロジェクトのコレクションやムードを描くための出発点になりました。


−次に挑戦したいことは。

現時点では、今のままアートディレクターやスタイリストとしてヴィジュアル作品に集中したいです。
将来的に落ち着いて、よりたくさんの経験を得られたら、アートやカルチャーに関するスペースをオープンさせたいと思っています。

人が集まって、お互いにインスパイアされて、アート・ファッション業界における新しいものを提案できるような空間。あるいは、インスピレーションが欲しい時にここに行けば確実、と思ってもらえるような空間。
そんな空間をオープンさせたいです。

そして、自分のインスピレーションに基づいていくつかか映像作品も作りたいです。
映像は私のイマジネーションをより正確に表現するために最適なツールなのです。
そしてその映像作品を通じて、ファッションとドキュメンタリーという一見すると異なるジャンルを統合させていきたいと思っています。



Min Kim:
2017年にロンドンのセントラル・セント・マーチンズを卒業。
現在はフリーランスのアートディレクターとスタイリストとして活動を行う。
大学時ではファッションデザインを専攻していたものの、今では自身のヴィジョンやアイデア、気分をより視覚的に表現することに熱中している。
@minkimmy

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